第53回宣伝会議賞 チャレンジブログ(グランプリ受賞者輩出)

日本最大規模の公募広告賞「宣伝会議賞」に挑戦する応募者10人のブログ。同企画初となる、チャレンジブロガーからのグランプリ受賞者(今野さん)を輩出しました。

谷山雅計さん+尾形真理子さん特別セミナー感想文。


つめたい雨に降られましたが、表参道まで出かけて行って本当に良かったです。

うまれて初めて参加するコピーセミナーでした。
 『  広告コピーってこう書くんだ!相談室( 袋とじつき )』の発刊を記念した会で、講師は著者の谷山雅計さんと、コピーライターの尾形真理子さんのお二人です。

 

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セミナーの様子など、深く心に響いたところを書きたいと思います。


初めて訪れる宣伝会議さんのオフィス。
それから、バスケットコートがスッポリ入りそうな広いセミナールーム。
そのイスに座って7時の開演を待ちながら、こんな自問自答を繰り返していました。

「 このセミナーを受けたあとも、コピーは独学です、って言えるかな。」

誰かに正式にコピーを教わってしまったら、もう独学と名乗れなくなってしまうかも、などとくだらない心配をしていた大バカ者です。
そんな自問自答のループを叩き切ってくれたのは、ご自身の座る場所を確認しに現れた谷山さんの  独り言( 大声 )でした。
10m以上離れた僕の席まで声が飛び散って来て、思わず、その独り言に返事をしそうになりました。
さらに、著書にあるプロフィール写真の印象から、頭の中で勝手に谷山さんと糸井重里さんのイメージを重ねていたため‥‥

「 わ、この、うるさいひとが??? 」

そんな、未知との遭遇でした。

セミナーの前半は、尾形さんから谷山さんへの質問を中心としたコピー談義、そして後半は、参加者からの質問に答えながらコピーの世界を斬る、という構成でした。
その中で、特に心に響いた言葉を挙げていきます。

尾形さん : 皆さんの中に、谷山さんのこの本を読むのに時間がかかったという
       方は
いますか?

谷山さん : これ、時間のかかる人はいないんじゃないかなあ。

尾形さん : わたしは、読むのにすごく時間がかかったんです。 あまりにも的確で。

谷山さんのおっしゃるように、僕は時間のかからない派、でした。
とても読みやすい上にわかりやすくて、ポイントを心に刻みながら、自然の流れで最後まで読めたからです。
しかし尾形さんの感想は、その逆でした。
本の内容があまりにも的確すぎて、それで時間がかかってしまった、というのです。

なんて面白い対談でしょう !

目の前の一冊をめぐって、「 時間はかからなかったとする空気 」と「 時間がかかったとする空気 」が、せめぎ合っています。
しかも、尾形さんたった一人と、その他全員という極端な構図です。
そんな尾形さんの口調はいつも、やわらかく刺さってくるように感じられました。
谷山さんに対するこんな視線も興味深かったです。

「 谷山さんって、このガス・パッ・チョ!の袋とじを読んでみてもそうですけど、
  すでに世の中にあるコトバを使う方だなあ、って思いました。」

また別の場面では、谷山さんのこの言葉も耳に残りました。

「 広告って、はじめから広告ってバレてるから面白いわけ。」

お二人の全く異なるテンションの張り方を楽しみながら、次々に飛んで来るコトバを著書の余白にメモっているうちに、世界に一冊しかない本ができあがりました。

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セミナーが始まって1時間ほど経過し、ぼちぼち会場の雰囲気も温まって来たかなというタイミングで、今度は、参加者からの質問によるコピー談義に移っていきます。
大声でしゃべりまくりながらも、一方では会場の温まり具合を繊細に読んでくださる谷山さん流のオモテナシが嬉しかったです。 「 ハイ質問ある人! 」と急に切り替えるのではなくて、まずはこんなクッションを用意して下さるのでした。

「 僕の声と話し方には「 圧 」があるらしくてね、僕の話したあとは、聞いてる方が
     黙っちゃって、質問が出て来なかったりもするんだよねえ。コワいかなぁ、僕。」

誰もが思わずクスッとなってしまうようなクッションをかませてもらいながら、いよいよ、進行役の方とマイクが会場をまわり始めます。
しかしながら、お二人の味わい深いコピー談に酔った直後の空気ですから、そう簡単に次々と質問の手が挙がるというわけにはいきません。
それでも、セミナー室の一番遠いところからマイクが歩き始めると、覚悟を決めた感のある方々が手を挙げ、ポツリポツリと質問は増えていきました。
専門的な内容の質問に対しては、当然、答えも専門的にならざるを得ません。わからない業界用語が飛び交う場面は、その質問の真剣さと、答えの熱さに学びました。

会場からの質問をきっかけにコピーの世界を斬りはじめて、4~5人くらい応答した頃でしょうか、ついにマイクがセミナールームの端にいた僕の方まで進んで来ました。ただこの時点で、150人いる会場の中から5つくらいの質問しか出ていなかったのが気がかりでした。
さらに熱いセミナーを求めるならば、もっとガソリンが必要に思えました。
このまま、僕のいるところまでマイクが一人歩きしてしまうくらいなら‥‥
そう思ったら手が自然に、谷山さんの本をめくり始めていました。
そしてパッと、本の中で一番心に響いたページを開いて、その文字を目で追いながら手を挙げました。

僕  :  えーとわたしは、広告業界とは別の世界にいるのですが、
   コピーが趣味なので今日参加させていただきまして‥‥

谷山さん  :  えっ、コピーが趣味 ?

尾形さん  :(  身を乗りだしながら、遠くに座る僕の位置をキョロキョロ確認  )

事前に準備していた質問ではなかったので、思わず、とっさに浮かんだ言葉からしゃべり始めてしまいました。
その瞬間のお二人の反応は、ごもっともですよね。
コピーが趣味だなんて、そんなノリであの会場に来ている人はいないでしょうし、そもそも今回チャレンジブログに参加していなかったら、絶対あの場所にはいなかったと思います。
そんな勢いにも助けられながら、もう開き直って、154ページの『 消えたかに道楽 』のくだりに登場する「 非言語的なコピー 」について尋ねました。

「 非言語的なコピーと呼べるものが、他にもありましたら教えてください。」

その答の中で、谷山さんからは天才たけしの元気が出るテレビ!の起こした革命の話が飛び出し、尾形さんからはスキポール空港の男子トイレの小便器に現れたハエの話などが飛んで来たりして、ブンブンワクワクする話がたくさん聞けました。
まるで、質問者である僕の趣味嗜好が一瞬にして読まれてしまったかのように。
もしや、これもコピーライターの職能のひとつ、ということなのでしょうか。

しかも驚異的なことに、谷山さんは僕の席から12mも離れて座っていたにも関わらず、バッチリ視線を合わせたまま、まるで目の前で喋っているように見えるのです!
3D映画のように、ドーンと飛び出して来るわけです。 あの声といっしょに。
それでもう何だかこちらも楽しくなって、自然にウンウンうなずいていました。
そんなドキドキも味わいながら、終演時間オーバーもまったく気にならず、あっという間の数時間が過ぎました。

そういえば開演前、宣伝会議のご担当の方に挨拶しに行った際に、
「 谷山さんのセミナーの前には、軽くうどんを食べておくんですよ。」
と言われたのを思い出しました。
その意味が、終盤になってやっとわかりました。


セミナールームを出て帰るころには、もう1階のエントランス扉は閉じられており、裏側の通用口から雨の表参道に出ました。

 
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傘をさしながら感じた余韻は、おもしろい落語をきいたあと、ホールから出てきた時に味わう余韻にも似ていました。