ファイナリストに選ばれた作品を、どう読むか。
見方はいろいろですよね。
グランプリはどの作品だろう ?
一番斬新な切り口はどれだ ?
心から嫉妬してしまう作品はあるかな ?
CMとキャッチフレーズはどちらが優勢 ?
酒のツマミに最高の一本はどれだ ?
などなど。
ちなみに、僕の見方はこうでした。
「 この人の書く、ほかのコピーも見てみたい 」 そう思える作品はあるかな ?
気持ちに一番ピッタリ合ったのは、この作品です。
ほかのコピーも見てみたいと思わせてくれる、オドロキの一本でした。
スゴイなぁと感じたのは、CMのことを一切ディスっていないのに、DMの価値観が
ちゃんと浮かび上がってくるところです。
二つの要素を対比させる場合って、片方を強くディスることで、もう一方を浮かび上がらせようとしがちですが、この作品は、対比相手となるCMのことを一切ディスっていないんですよね。
それどころか、CMにはCMの魅力があって、広く世間に向けて「 おーい 」って訴えられることを、ちゃんと認めています。
こんなふうにCMもDMも両方とも持ち上げたりしたら、フツーなら、対比の構図が際立たなくて、コピー全体の印象も薄まってしまいそうです。
でも、この作品はそうなっていない上に、 CM も Win、 DM も Win。
ここちよい Win-Win な空気で満たしてくれます。
なんでしょう、この作品の、やわらかい強さは。
なんでしょう、この作品の、ぽかぽかする感じは。
それは、誰も傷つけずに自分の力で光ることのできるコピーだから。
それは、社会と幸福な関係を築けるコピーだから。
そんな気がします。
自分の書くコピーとは、真逆みたいです。
課題にチャレンジしている時の僕は、こんな思考に支配されています。
「1+1は?」という出題企業の課題文に対して素直に「1+1=2」とは答えずに、意図的に「1+1は1と3の間の整数です。」とか「1+1=2かと思ってた。昨日までは。」とか「1+1=-2らしい。天国では。」みたいなズラした言い方を考えながら、読む人を温かい気持ちにさせることよりギクッとさせる効果を狙って、一行の中にわざと刺激的な単語を一つ入れるように工夫してみたり、仮想の敵を作って攻撃することで説得力を引き出そうとしてみたり、審査員の背中にそっと近づいて「 ワッ!」っと驚かすみたいな書き方をしてみたり‥‥
そんな、とってもあざといコピーの書き方を、くり返してきたような気がします。
それでも何とか、二次審査までは許してもらえたわけですが‥‥。
ここから上は「 もう通用しないぞ! 」 と、そう言われたような気がしました。
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あしたの正式発表までは、どの作品がグランプリに輝くのかはわかりませんが、
僕には、この一本が輝いてみえます。